症状別対応法

名古屋市認知症コールセンターに寄せられる相談の中でも多い
BPSDや中核症状等に対する対応方法についてご紹介いたします。

紹介する対応方法は、コールセンター業務で活用している
NHK厚生文化事業団発行の小冊子「家族が認知症と診断されたあなたへ」を引用し、
本センターでの嘱託医等とおこなった事例検討の結果や
相談内容に関係する名古屋市の制度を添えています。

いつでも、どんな方にも有効な介護方法はありませんが、介護する際のヒントにしていただければ幸いです。
詳しくは、認知症コールセンターにご相談ください。

① 食べた直後なのに「食べてない」と言う

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
義父が、今食べたばかりなのに「食べてない」と訴え、困っています。
どうしても「さっき食べたばかりでしょ!」
と怒ってしまいます。
(相談者:嫁)

「うちの嫁がご飯を食べさせてくれない」と言われたりすると、認知症によるものだとわかってはいても冷静でいることは難しいですよね。ましてや、それが毎日ではうんざりしてしまいますね。忙しい中だとなおさらだと思います…

原因としては、食べたことを忘れてしまうことがあると思います。
また、脳の満腹中枢に障がいが及んで満腹感が得られないことなどが考えられます。また、何らかの不安を感じていて、症状を強くしている場合もあります。

気持ちを尊重して対応しましょう

「食べてない」という訴えを否定されると、不安はますます大きくなります。「食事をしたい」という気持ちを尊重して、「今、準備するから少し待ってね」などと答えてみましょう。
「あなたの食事のことはちゃんと考えていますよ」という姿勢を見せて、安心してもらうのです。
それでも食事を求めてくるなら、「食事ができるまでこれで我慢してくださいね」と言って、菓子や果物などを少量渡しましょう。

上手に関心をそらせましょう

食事を訴える気配を感じたら、すぐに別の話題を持ち出して、食事への関心をそらせるのも一つの方法です。庭の水やりや軽い体操など、興味を持ちそうなことを提案してみましょう。

不安を取り除きましょう

何度も「食べてない」と言う背景には、自分を見る周囲の人の目が変わったと感じ、自分だけ食事の仲間に入れてもらえないといった被害妄想を抱いている場合もあります。できるだけそばにいて相手の話に耳を傾けることで、食事の訴えが減ることもあります。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

☎052-734-7089
受付時間:月曜日・水曜日・木曜日・金曜日(祝休日、年末年始を除く)午前10時から午後4時まで。
     火曜日(祝休日、年末年始を除く)午後2時から午後8時まで。

名古屋市では家族が対応方法など認知症について学ぶ「認知症の家族教室」を各いきいき支援センターで行っています。
【名古屋市認知症高齢者を介護する家族支援事業】▶ (外部リンク)
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② ひとりで外出し、道に迷ってしまう【徘徊(はいかい)】

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
夫が夕方になるとソワソワして外に出ていこうとします。
最近は、夕方だけでなく、昼間や夜にも外に出ていこうとし
止めようとしても聴く耳をもってくれません。
(相談者:妻)

1日中、目が離せないと気が休まりませんね。夜は眠れていますか?
徘徊(はいかい)とは、目的もなくあちこちを歩き回ることだと思われがちですが、ご本人なりのお出かけする目的や理由があります。
例えば、自宅にいることがわからず、自分の家へ帰ろうとしたりするのです。しかし、しばらく歩くとその目的を忘れてしまいます。そのうち自分のいる場所がわからなくなってしまうのです。

介護保険制度では「認知症老人徘徊感知機器」が福祉用具貸与の対象になっており、さまざまな種類の機器を安価に借りることができます。
ケアマネジャーに相談しながらご主人の状況に合った対策を試してみましょう。

出歩くのを思い止まる工夫をしてみましょう

・通勤しようとする場合


日曜日の新聞を見せて、「今日は日曜日ですから、会社はお休みですよ」と声をかける。

・自宅へ帰ろうとする場合


「今日は遅いから、ここに泊まってはいかがですか?」「ごはんを食べてから帰りましょう」などと声をかける。どちらの場合も、事実を教えて説得するのではなく、事実でなくても納得してもらえる言い方を工夫してください。

迷ったときの対策を立てておきましょう

・歩くルートを把握する


歩くのに何度かつきあって、よく通る道や、立ち寄る場所を把握しておきます。また、ご本人と歩きながら商店や近所の人に声をかけ、さりげなくアピールしておくことも大切です。一人で出かけた場合に、居場所の見当がつきやすくなりますし、街の人も心配して声をかけてくれるでしょう。

・名札をつける


名前や連絡先を書いた名札を、いつも携帯する持ち物や衣類につけておきます。途中で上着を脱いだり、持ち物をどこかに置き忘れることもあるので、ズボンに縫い付けたり、お守りの中に連絡先を書いた紙を入れるなどの工夫をすると良いでしょう。居場所がわかる小型端末機を利用するのも良いでしょう。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

☎052-734-7089
受付時間:月曜日・水曜日・木曜日・金曜日(祝休日、年末年始を除く)午前10時から午後4時まで。
     火曜日(祝休日、年末年始を除く)午後2時から午後8時まで。

名古屋市では、徘徊のおそれがある方の情報を登録した上で、その方が行方不明となった場合に、家族等からの依頼により、行方不明となった方の身体的特徴や服装等の情報を協力者に対してメールで配信し、情報提供をおこなっています。
【名古屋市 はいかい高齢者おかえり支援事業】▶ (外部リンク)
【ひとり歩きさぽーとBOOK  瑞穂区東部・西部いきいき支援センター】▶ (外部リンク)
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③ 財布を盗まれたと言って騒ぐ【物盗られ妄想】

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
母が「ものが盗まれた。嫁がやったに違いない。」と訴えてきます。
認知症による症状だとはわかってはいるのですが
いつもカッとなってしまい「そんなことあるわけない!」と
母にきつく当たってしまいます。
(相談者:息子)

認知症の症状だと理解はしていても、“否定しないで一緒に探しましょう”などと本に書いてあるようにはなかなかうまくいかないものですよね。すぐに解決する方法はないかもしれないですが、いろいろな対応策が考えられますので、うまくいかなかったらいつでも電話してくださいね。

疑われるのは、たいてい嫁や娘など身近な人です。介護に明け暮れているのに、身に覚えのない疑いをかけられるのは不本意ですね。ただ、盗んでいないと反論してもなかなかご本人には通じないことを、十分に理解しておきましょう。

ご本人の気持ちに共感しましょう

「あなたに財布を盗られたと思い込み、怒っている人に対して、「盗るわけないじゃない」と言い返したり、「ちゃんと捜したの?」と、ご本人に落ち度があるような言い方をすると、ますます興奮して攻撃的になる場合があります。まず、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせましょう。妄想に対しては、肯定も否定もしないのが原則です。財布を無くして困っている気持ちに共感して、いっしょに捜しましょう。自分の言い分をわかってもらえたと思うと、怒りは収まってきます。

自分で見つけられるよう誘導しましょう

無くした財布を、家族が引き出しの奥などから見つけてくると、「私が騒いだから、こっそり戻しておいたのだ」と思ってしまうかもしれません。家族が財布を見つけたら、ご本人が自分で見つけられるように、うまく誘導しましょう。そして、自分で見つけたら、「見つかって良かったですね!」と、いっしょに喜びましょう。

専門医に相談しましょう

家族では対応しきれないと思ったら、早めに専門医に相談しましょう。適切な治療を受けることで、妄想の多くは改善されます。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

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名古屋市では家族が対応方法など認知症について学ぶ「認知症の家族教室」を各いきいき支援センターで行っています。
【名古屋市認知症高齢者を介護する家族支援事業】▶ (外部リンク)
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④ トイレ以外の場所で用を足す

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
最近尿で義母の衣服が濡れていたり、
部屋の片隅に尿をしてあることが増えてきました。
トイレに連れて行こうとしても「今はしたくない」と
なかなか一緒に行ってくれません。
(相談者:嫁)

認知症の進行により排せつの支援が必要になってきているのかもしれないですね。おトイレのことは自尊心に関わることですから、恥ずかしいと言う気持ちがあったり、声のかけ方が難しいかもしれないですね。

認知症の進行により、排せつの介助が必要になってくると、介護する人の負担は大きくなってきます。でも、「だめじゃない!」と叱ったり、「ここはトイレじゃありませんよ」と教えても、事態はなかなか変わらないかもしれません。デイサービスでの昼間の様子をスタッフに聴いて、相談しながらお義母さまの状況に合った対策を考えていきましょう。

失敗する理由を探ってみましょう

・トイレの場所がわからず、あちこち探しているうちに失敗してしまう場合


トイレがどこにあるかわかるように、ドアを開けっ放しにしたり、夜でも明かりをつけておいたり、入り口にはっきりトイレだとわかる表示をします。「お手洗い」「便所」など、ご本人がふだん使っている言葉を紙に書いて貼るのです。

・トイレの使い方がわからず、まごついているうちに失敗してしまう場合


何年も洋式トイレを使っていたとしても、今は、子どものころの和式トイレの記憶しか残っていないのかもしれません。トイレの使い方がわからないようなら、排せつの介助が必要な時期になったと考え、トイレに付き添いましょう。ご本人のプライドを尊重して、さりげなく手助けすることが大切です。

・特定の場所をトイレと思い込んでいる場合


いくらトイレに誘導しても、トイレではない場所で用を足してしまう場合は、その場所にポータブルトイレを置いてみましょう。

定期的にトイレに誘いましょう

時間を見計らってトイレに連れて行くことを心がけてください。トイレに行った時刻を記録し、本人の周期に合わせてトイレに誘いましょう。
トイレのタイミングがなかなか合わず、失敗の回数が多い場合は、おむつを使うことを考えましょう。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

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⑤ 夜になると活発に行動する【昼夜逆転・不眠】

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
妻が夜中に起き出して、箪笥を開けたり、台所でお菓子を食べたりして、
私は夜間に落ち着いて眠られず睡眠不足です。
どうしたら良いでしょうか。
(相談者:夫)

よく電話をしてくださいました。夜寝られないのはつらいですね。体調を崩してないですか?

デイサービスは利用されていますか?昼間の様子はいかがですか?
デイサービスに行くことを嫌がっていたら、利用できるように私も一緒に考えていきますので、いろいろと対策を試してみましょうね。

さまざまな原因から症状が出てきます

認知症になると、脳の中の体内時計がうまく働かなくなります。また、見当識障害により、外が暗くなっても「夜だ」と認識しません。加えて、日中ずっとベッドに横になっているような生活が続くと、昼夜逆転は、ますます促進されていきます。まずは、生活リズムを作ることが大切です。

昼間の活動量を増やしましょう

昼間は、簡単な家事を手伝ってもらったり、散歩や軽い運動に誘ったりして、ご本人が頭や体を使って活動的に過ごせる時間をつくりましょう。また、介護保険のデイサービスなどを利用することをお勧めします。

眠りやすくなる工夫をしましょう

夜は、照明を落としたり、テレビを消すなど、静かで落ち着いた雰囲気の中で過ごせるようにしましょう。また、気持ちよく眠りにつけるように、寝室の温度調節や寝具にも気をつけましょう。

早めに医師に相談しましょう

昼夜逆転や不眠には、生理学的な原因があります。生活リズムを作る工夫をしても症状が改善しない場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

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     火曜日(祝休日、年末年始を除く)午後2時から午後8時まで。

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⑥ 突然興奮したり騒いだりする【せん妄】

(名古屋市認知症コールセンターへの相談より)
理由が思い当たらないのに、普段は落ち着いているのですが
大声でわけのわからない言葉を発したり、
物を投げつけてくるときがあります。
以前は穏やかで優しかった父を怖いと思ってしまいます。
(相談者:娘)

お体は大丈夫ですか?以前のお父様と違う姿をみることはつらいことですね。お父様からすれば、何か理由があってそのような行動がでてしまうのかもしれないですね。体調の変化によっても、そのような症状が出る場合もあります。お医者さんには相談されていますか?理由を専門家と探っていけると良いですね。

ふだんは落ち着いて過ごしているのに、突然、人が変わったように興奮して歩き回ったり、支離滅裂なことを大声で言ったり、見えないものが見える幻視が起きたりする場合は、「せん妄」が起きている場合があります。夜になると起こりやすい症状です。

しばらく様子を見守りましょう

言葉で静かにさせようとしても効果はありません。力でおさえつけたり、部屋に閉じこめたりすると、よけいに興奮がひどくなります。手をあげそうになったら、その場を離れましょう。少し落ち着いてきたら、さりげなくお茶を勧めたりして、家族が見守っていることを知らせましょう。

専門家の手を借りましょう

興奮がひどいと、家族だけでは対応できない場合があります。いきいき支援センター(地域包括支援センター)や、かかりつけ医、訪問看護師などと相談して、ふだんから、いざという時どうすれば良いか、話し合っておきましょう。

取り除ける原因もあります

せん妄の原因は実にさまざまです。脱水、貧血、低血糖、睡眠不足、発熱などの体調不良が、せん妄を引き起こす場合もあります。薬の副作用で起こるケースも少なくありません。また、ご本人の言いたいことがうまく家族に伝わらない、といったストレスが、原因になることもあります。早めに主治医に相談し、取り除ける原因は取り除くようにしましょう。

詳しくは名古屋市認知症コールセンターにお尋ねください!

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受付時間:月曜日・水曜日・木曜日・金曜日(祝休日、年末年始を除く)午前10時から午後4時まで。
     火曜日(祝休日、年末年始を除く)午後2時から午後8時まで。

認知症疾患医療センターは「専門医療相談」を行っています。
【愛知県における認知症疾患医療センター指定病院】▶ (外部リンク)

参照:冊子「家族が診断されたあなたへ」(NHK厚生文化事業団発行)より

【詳しくは…】
国立長寿医療研究センター「認知症情報サイト」「よくある相談・Q&A」
2. 認知症の人と上手に向き合うために
 [05] 対応に困る言動との向き合い方
などをご覧ください

(外部リンク)
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